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クリエイティヴ・トーク・イン・アジア(CTA)から受けたデザインについてのインタヴューを日本語訳で掲載しました。
あなたはどの国が一番好きですか?(国の文化や特徴など)それはあなたのクリエイションに違いを生みましたか?
日本は「感情の文化」なので、身の回りに溢れているデザインが感情的に形成される傾向があります。例えばパッケージデザインを見た時、商品名とイラストとが、隙間なく配置されている印象を受けます(例外はありますが)。それは視覚認知的な意味で一つの塊の中にパーツがあるということですが、その場合デザインの中に入れないものがあります。それは思考です。「思考がパッケージの中に入る」と聞くと難しそうですが、感情的なデザインが街に溢れることで人は衝動的な買い物をするようになります。良き文化生活を送る為には健全な思考と判断力が必要で、例えばスーパーに置いてあるパッケージデザインからでも人はある一定の影響を受けています。ヨーロッパは思考的な文化で(バランスを取るという意味で)、ヨーロッパ文化から学ぶことは多いです。
あなたはどこからインスピレーションを得ますか?
一:クライアントの要望を踏まえ、依頼された市場のリサーチを開始します。それは市場にある既製品を把握し、市場を変革する新しい価値観を見い出す為に必要です。
二:市場調査から得られた結果を言語的に分解し、必要な要素と不必要な要素に分類します。
三:一、二で導き出した理念を製品化する際、その新しい価値観がどのように理解され、市場にインパクトを与えることが出来るかを考慮します(革新を望むクライアントや保守的なクライアントはそれぞれ調整します)。
四:プロトタイピングを行います。形成した理念に合致するデザインへ、技術的、精度的な意味で合格点が出せるように何度も試作を行います。
五:時間をおいて客観的な立場で眺めます。日本の諺で「灯台下暗し」という言葉がありますが、一つのことに関わり過ぎると全体が見えなくなるので、時間をおいて眺めるよう心掛けます。
六:更に一〜五を繰り返した後、フィニッシュします。
七:蓄積された仕事の結果が次の発想の源となるので、反省点や経験を踏まえ、発想に磨きをかけます。
私たちと良い本、音楽、映画や場所を共有してください。
私が映画に目覚めたのは小学生の時に観た『バック・トゥ・ザ・フューチャー』です。個別の映画ではありませんが、一つの作品を10回以上観ることが出来るかということも私の中で良い作品か判断するポイントです。
あなたの作品で選ばれなかったものに対して、後悔してること、心残りを思い返してみて、どういう風に感じていますか?
非常に興味深い質問です。それは多くのデザイナーが経験していることだと思います。クライアントの意向や予算、複雑な問題が原因となって実現しない案はあります。しかし幾つかの改善点を見出して実行していることがあります。例えばデザイナーは、ただ消費する為だけの商品を作っている訳でない、ということをプレゼンの場で共有したり、社会を活性化し、もっと良くしていく為にデザインを行っている、ということを様々な方法を使って社会と共有しています。
あなたは、デザイナーやイラストレーターであることを除いて、新たな目標を設定するために何か始めたことはありますか? 登山、料理を学ぶような……
私は日課としてランニングをします。料理を作ることも好きで、ウイスキーを飲むこと、読書も好きです。
あなたの人生の詳細な主張とは何ですか?
私は純粋にデザインが好きで、物作りが好きです。そしてこの社会には既にあらゆるデザインが溢れてます。しかし社会に溢れる多くのデザインは、実際の所、私には縁遠く感じますーー一般の人もそう思うのではないかと思いますーー。つまり周りを見て「これはすごいデザインだ! あれもすごいデザインだ!」とはならない訳です。皆社会に溢れるデザインを素通りしていて、私たちはデザインとは関係ない世界で生活していると感じます。私はそれが非常に勿体ないことだと思います。何故なら人がデザインに興味を持ったり、良いデザインに感化されて何かをしよう! と決意したりすることが実際にあるからです。人が感情を動かされたり、感化されたりするーーそれは世界に対して興味を持つということですがーーデザインが溢れれば、どれだけ良いだろうと思います。それは自分の手足が社会の中に浸透し、社会の中に自分の手足の一部を見出すような感覚です。自分は社会と繋がっていると感じ、社会の中に自分の居場所を見出すことが出来るようになります。私は経験上、そういったことを意図的に行っているデザインはまだ少ないと思います。ですから良いデザインを社会に投入することによって、デザインという立場から人の心を動かしたり、社会を活性化することができれば、と考えています。